狂言師 小笠原匡

コラム

「風流」の歩みと展望

大阪在住の各古典芸能若手が主催する「風流」公演が、 去る七月六日にOAPタワー38階スカイプラザ特設会場にて行われた。

この「風流」の歩みは今から七年前に遡る。ある共通の知人を介して、食事会と称し一杯飲んだのがきっかけだった。 当時は皆各々の世界でやっと独立したばかりの状態で、夫々が新たな栄養源を求めているさなかであった。

何度か交流を重ねていくうちに、自然の流れとして各業の発表会的公演が企画され、実現に至った。 「弁天座」と称した記念すべきワッハ上方での初公演では「能楽」「文楽」「落語」を数珠繋ぎに上演する形式を取った。 珍しい企画であった為か当日は満員御礼、お客様の評判も良く、会としては一応成功であった。 しかし今振り返れば、各自の芸能にはもちろん自信を持ちつつも、全体としては余りに纏まりの無い公演であったように思う。

その後も此れだけの仲間が集まっているのだから、何か面白事をやりたいという点では一致するものの、 各自が思う次の展開を夫々が好き勝手に主張し、全体としては相変わらず纏まらない。 全ての分野が一同に会した“融合舞台”を主張する意見がある一方で、伝統的な上演方法の約束を違える事なく、 本来の儘で良いという声も出る。

このような試行錯誤が続くうちに、メンバーの何人かが入れ替わっていった。

残ったメンバーにより集団名を「風流」と改め再結成し、いよいよ融合を図るが、 いざ一緒の舞台に立つと相手の芸に対する理解が足りない為、全く呼吸が合わないのである。 個人芸と集団芸との芸形態の違いや、発声・身体表現力など様々な問題点が浮き彫りになってしまった。

そこで定期的に非公開で内輪のワークショップを行い、メンバーが順番に講師・生徒となり、 お互いの芸に対する理解を深める作業を行った。 このワークショップでは様々な新しい発見があり、今の我々にとって貴重な財産となっている。 (この作業は現在でも継続しているので、近々公開形式にし、是非皆様にも参加して頂きたいと考えている。)

これらの諸問題一つ一つに、根気強く時間を掛け克服していく事により、 全体の進むべき方向性がようやく見えてきたように思う。

昨年から従来の「能楽」「文楽」「落語」以外に「講談」「和太鼓」の二ジャンルを新たに加え、 この方向性を具体化する手始めとして、伝統的な上演方法に則る《オムニバス》普及公演と、 各ジャンルが一同に融合する《コラボレーション》特別公演を、それぞれ年に一回ずつ催す事になった。

去る七月の特別公演では、 日本芸能の源である声明を題材にすれば、各ジャンルの融合が図れるのではと考え、 自身昨年秋に創作した新作狂言「京都大原良忍物語」を今回さらに改作致し、声明・雅楽・菩薩来迎に加え、 現在NHK大河ドラマ「義経」にて考証・作曲した「今様」をも融合させた、 風流版 スペクタクル「良忍さん」として上演した。

たしかに古典芸能は簡素美をその特徴としているが、それは先人達が沢山の無駄な部分を、 何百年もの時間をかけて洗練した御蔭である。

風流≠フ意を現代では、風鈴の涼しげな音を「あヽ風流だねぇ」など、優美さに用いられがちだが、 中世では“バサラ風流 ”など、ムヤミやたらに着飾る事の意ともされていた。

それゆえ本年の「風流」特別公演では、あえてムヤミやたらに着飾った感があったが、 今後も試行錯誤を繰り返しながら、古典芸能の素晴らしさを再認識して頂ける事を第一とし、 また形骸化により失われてしまった何かを、皆様と共に発見する事が出来れば幸いである。

(上方芸能 「芸能ジャーナル」より)

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